分子科学研究所 極端紫外光研究施設

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光源の現状(2023年度)

2023年度は、UVSOR-IIIは予定通り、2023年5月末から2024年3月までの36週間、ユーザー運転を行いました。月別の運転時間と積算ビーム電流の統計を、図1に示します。4月初旬から5月初旬にかけては、定期点検が行われました。運転停止後の2週間は、加速器とビームラインの調整に充てられました。
週間運転スケジュールは以下の通りです。月曜日は朝9時から夜9時までマシンスタディに割り当てられています。ユーザー運転は火曜日から金曜日まで割り当てられており、火曜日と水曜日は朝9時から夜9時まで、木曜日は朝9時から金曜日の夜9時まで、36時間連続して運転されます。これにより、ユーザーのビームタイムは1週間あたり60時間となります。
7月~8月にかけて落雷による瞬時電圧低下が頻発し、ビームダンプが発生し運転時間が減少しました。シンクロトロン1次キッカー用パルス電源の高圧充電ケーブルの絶縁破壊が数回発生しましたが、ケーブルの交換により復旧しました。線型加速器用Sバンドパルス増幅器の故障が発生しましたが、増幅器のゲイン調整により対応しました。再発の懸念があるため、S-bandパルス増幅器の更新を検討しています。
電子ビーム蓄積リングへの入射効率は、2023年1月頃から低下し始めました。入射効率は、ブースターシンクロトロンと蓄積リング間の輸送ラインを通過する電流値の増加分Iを蓄積電流値で割った値として算出されます。通常運転時は、入射効率が60~70%、δIが0.4~0.6mA/shotでしたが、2023年1月以降は、入射効率が20~30%、δIが0.1~0.3mA/shotに低下しました。蓄積リングに1週間あたりに入射できる電子数が限られているため、300mA運転を継続することが困難になってしまいました。そのため、2023年5月より蓄積電流値を200mAに落としてユーザー運転を実施しています。原因究明のため、さまざまな調査を続けていますが、今のところ明確な原因は特定できていません。しかし、ブースターシンクロトロンから取り出される電子ビームの品質が劣化していることは確認されていまず。ブースターシンクロトロンの偏向電磁石部にある真空ダクトはたびたび真空漏れが起きていますが、調査のため大気解法を行うことで真空漏れの状況を悪化させてしまう懸念があり、真空ダクト内部を目視で確認することができていません。偏向電磁石部にあるすべての真空ダクトは、2025年春に新しいものに交換される予定です。その際に、ブースターシンクロトロン部の真空ダクト内部にビームを散乱させる異物があったのかどうか確認を行う予定です。
将来のUVSOR-IV建設に向けての設計研究を開始しました。第一段階として、現状の磁石配置を解析し、エミッタンスをさらに低減できる可能性を検討しました[1]。劇的にエミッタンスを低減できるような解決策は見つかりませんでしたが、エミッタンスの低減に寄与し得る興味深い解決策をいくつか見つけることができました。第二段階として、VUV領域で回折限界に近い性能を持つ全く新しい蓄積リングの設計を開始しました[2]。 文部科学省・科学技術振興機構(JST)の「量子ビームテクノロジープログラム」の支援を受けて建設された光源開発と利用ビームラインBL1Uでは、自由電子レーザー、コヒーレント高調波発生、コヒーレント放射光、コヒーレント制御[3]、レーザーコンプトン散乱ガンマ線[4, 5]、光渦[6]などの新しい光源技術とその応用を開発し続けています。

1] E. Salehi and M. Katoh, Proceedings of IPAC2021 (2021) 3970.
[2] E Salehi, Y Taira, M Fujimoto, L Guo, M. Katoh, J. Phys.: Conf. Ser. 2420 (2023) 012062.
[3] Y. Hikoska et al., Sci. Rep. 13 (2023) 10292.
[4] Y. Taira et al., Phys. Rev. A 107 (2023) 063503.
[5] H. Ohgaki et al., Phys. Rev. Acc. Beams 26 (2023) 093402.
[6] S. Wada et al., Sci. Rep. 13 (2023) 22962.

Yoshitaka TAIRA (UVSOR Synchrotron Facility, Institute for Molecular Science)

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