固体の物性を決定づける電子の振る舞いと原子の配列

 分子科学研究所 松井グループでは、X線で固体表面を励起し、飛び出してくる光電子の角度分布を詳しく調べ、固体の物性を決定づける電子の振る舞いと原子の配列を明らかにする研究を行っています。私たちは、放射光の大強度・集光性・偏向特性・エネルギー可変性・クリーン、といった特徴を生かし、光電子のスペクトルと角度分布に豊富に含まれる固体物性の情報を紐解く手法論と装置の改良を行ってきました。新しい切り口で興味深い試料を測定すると、まだ誰も知らない物理に出会うことがあります。それを楽しみに研究を続けています。


ビームライン及びエンドステーション BL6 at UVSOR-


 UVOSR-IIIシンクロトロン光共同利用施設では極端紫外光から軟X線までの高輝度・波長・偏光可変のシンクロトロン光を利用した実験を行うことができます。松井グループでは、主にBL6Uを利用して研究を行っています。 分子科学研究所・極端紫外光研究施設(UVSOR)は、共同利用施設です。UVSORのご利用を希望される方、実験装置の詳細を知りたい方は、 UVSORホームページ又は各ビームライン・実験装置担当者までご連絡ください。 UVSORの利用について

BL7U -極端紫外光領域における固体・薄膜の低エネルギー高分解能角度分解光電子分光-

 BL7Uでは、極端紫外光と呼ばれる光hν = 6 eV 〜 40 eVの(波長:λ〜30-200 nm)の極端紫外領域のシンクロトロン光を利用して、固体バルク及び薄膜の低エネルギー 角度分解光電子分光(Angle-Resoloved Photoemission Spectroscopy: ARPES)を行うことができます[1]。BL7Uは、APPLE-II型のアンジュレータにより高輝度な シンクロトロン光(photon flux: 1011 - 1012)を発生させることができ、また高いエネルギー分解能(hν/Δhν = 10,000)を実現しています。
 BL7Uのエンドステーションでは、2018年6月現在、静電半球型分光器(MB Scientific AB, A-1 analyzer、取り込み角度:± 20°)、及び6軸マニピュレータ が設置されています(測定可能温度:T = 6-500 K)。これらの設備により、BL7Uでは、物性の理解を目的とした、3次元フェルミ面の観測や、低温・高温における物質の電子構造の変化等の低いエネルギー励起状態を詳細に観測することができます。その他の詳細については、装置担当者にお問い合わせください(お問い合わせ先)。


[1] S. Kumura et al., Rev. Sci. Instrum. 81, 053104 (2010).


BL5U -固体・表面の空間・エネルギー・スピン高分解能角度分解光電子分光-

 BL5Uでは、hν = 20 eV 〜 200 eVの高輝度・偏光可変なシンクロトロン光を利用して、固体バルクや表面の電子構造を調べることができる実験ビームラインです。2014年1月より、ビームライン及びエンドステーションを高エネルギー分解能の実現を目指しアップグレードしたため、 ユーザー利用ができなくなっていましたが、2016年6月よりARPES測定は利用開始になりました。また、この実験ステーションでは、従来の角度分解光電子分光に加えて、スピン分解・電子構造の空間依存性も新しいスピンディテクターと数十μmまで集光されたビームにより観測することができる予定です(2019年以降を予定)。 その他の詳細については、装置担当者にお問い合わせください(お問い合わせ先)。



超高真空装置の開発

田中グループでは、超高真空中で利用する試料位置制御用ゴニオ(マニピュレータ)の開発を行っています。当研究室が独自に開発したマニピュレータ(6軸制御)で、 試料位置での到達温度が6K、参照試料(Au)の位置で5Kを達成しており、極低温が必要な実験テーマにも利用することが可能です。



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